テレビ朝日系列のドラマ「トリック」の劇場版は、全部で4作ある。ではその中で一番売れたのは、つまり興行収入が一番多かったのは、となると2作目の『トリック劇場版2』(2006)になるらしい。興収およそ21億円。一応以下に「トリック」の劇場版を並べておく。
1. トリック劇場版(2002)興収約13億円
2. トリック劇場版2(2006)約21億円
3. 劇場版トリック 霊能力者バトルロイヤル(2010)約19億円
4. トリック劇場版 ラストステージ(2014)約18億円
並べてみると、2作目から4作目にかけては極端な動きはほとんどない。つまり2006年以降、おそらく「トリック」という番組は、新規のファンをほぼ獲得することなく、いわゆる「固定ファン」だけが観続ける状態になったと推測される。もちろん新規ファンの存在がゼロであるということはない。CSで一挙放送されているのを観て、2009年にファンになりました、という人だっていると思う。ただ、大雑把に数字だけを見ると上記のような推測になると受け取って頂ければ幸い。
「トリック」とはどんな物語か。物理学者の上田次郎(阿部寛)は自称「天才物理学者」で、どんな怪奇現象もトリックであり、物理学で解明できるとさまざまなメディアで豪語する。そんな彼のもとには、不可解な現象や、超科学的な術を使う人に関する相談が、さまざまな地方からたびたび持ち込まれる。それを上田はドンと来いと引き受けるが、実際には1人だと心細い。そこで知り合いの自称「売れっ子マジシャン」の山田奈緒子(仲間由紀恵)をなんだかんだと言って連れ出し、現地へ向かう。
いずれの劇場版も、このストラクチャーが採用されている。現地で起こる怪奇現象や謎は本当にトリックなのか。果たして彼らはそこで何を見るのか。
「トリック」はもともとテレビドラマであった。ドラマは2000年に深夜枠で放送され、時代にその名を確かに刻んだほどの大ヒット、とまではいかずとも、一部から強烈な支持を受けた。2002年には同じく深夜帯で「トリック2」が、そして2003年には第3シリーズが晴れてゴールデンタイムで放映された。
つまり最初の劇場版(2002)は、当ドラマの人気が上昇中のタイミングで公開されたと見てよかろう。興収もまぁまぁといった所に落ち着いた。ところがその後も(テレビドラマが終わった後も)人気は続いた。その絶頂ポイントが、おそらく『トリック劇場版2』だったのではなかろうか。
では、この『2』は他の劇場版と比べて何が違うのか。おそらくだが、4作品の中で一番初心者に優しい。私、「トリック」って観たことないんだけど、という人が、物語世界に(たぶん)一番入っていきやすい劇場版ではないかと。
最初の劇場版と『ラストステージ』は、上田と山田の関係性をあらかじめ把握していないと、いささか味わいにくいと思う。『霊能力者バトルロイヤル』も山田や彼女の母親(野際陽子)の素性をテレビドラマでおさらいしてから観た方がベターな気がする。消去法で『2』になる、という次第。
私は「トリック」を、ドラマも新作スペシャルも劇場版も全て観た。その上で言うなら、この『2』は円熟期であると思う。確かに、不特定の誰かに対してバーンと「これが『トリック』です!」とプレゼンするなら、劇場版の中では今作が、まぁ適当になるかなと。シリーズを貫くテーマ(みたいなもの)も内包されているし。初心者の方に薦めるなら、個人的には「新作スペシャル2」がいいんじゃないかなと思うけど。