福山雅治と柴咲コウが主演を務めるドラマ『ガリレオ』が放送され、平均視聴率が約22%(関東地区)をマークするほど人気を博したのが、2007年の暮れ(10~12月)でした。個人的なことを言えば、私はテレビ・ドラマをほとんど観ないのですが、この2006~2007年はドラマの「当たり」率が高かったというか、面白いと思うものが結構あって、存外に観ていました。『結婚できない男』とか、『ホタルノヒカリ』とか。
『ガリレオ』もその「当たり」のひとつで、楽しみに観ていました。で、ドラマ放送から1年が経過して、そのドラマが今度は銀幕に帰ってきた━━のが、2008年10月に公開された東宝映画『容疑者Xの献身』です。もちろん、本作も観に行きました。近所のマイカルシネマ(当時)まで。
と、要するにドラマの映画版なわけですから、まずは『ガリレオ』とはどんな話なのか、というところから話を始めたいと思います。
柴咲コウが演じるのは若い女刑事、内海薫です。彼女はさまざまな難事件を解決してきた先輩の草薙刑事(北村一輝)に憧れ、交通課から捜査一課に配属となったのですが、実は草薙は敏腕刑事でもなんでもないことが、草薙自身から明かされます。彼は難事件があると、知り合いの大学準教授に相談し、協力してもらっていた。それで事件が解決していたのだと。
「へえ、そうなんだ」の内海は、草薙から、その「知り合いの大学準教授」を紹介されます。それが草薙の母校、帝都大学で物理学科研究室に所属している湯川学(福山雅治)でした。
湯川は、草薙から「変人ガリレオ」と評される通り、物理学にかけてはとてつもなく博識で、その知識と明晰な思考を以て事件の謎を解明しようとします。ただ、やはり「変人」と言われるだけあり、人間的な機微に関してはちょっとズレている。彼が興味を抱くのは事件の謎であり、それさえ解明できれば事件そのものは別にどうでもいいらしいのです。そうした冷徹さや人情味のなさが内海にはどうにも馴染めず、2人はすれ違うばかりなのですが、ともあれ、そうして内海は湯川とたびたびコンビを組み、いくつもの「なんじゃこりゃ?」な事件に挑むのでありました━━というのが『ガリレオ』の概要になります。
基本的には、内海と湯川を軸にした1話完結型ミステリーで、回ごとにゲスト俳優が異なります。個人的には、釈由美子の回が印象深いですが。
で、いよいよ話は『容疑者Xの献身』です。
本作の主人公は(たぶん)内海や湯川ではありません。堤真一演じる石神哲哉という数学教師と、町角の弁当屋「みさと」で店長を務める花岡靖子(松雪泰子)です。花岡は薄幸の美人というか、男運がないアラフォー女で、結婚して娘をもうけたものの、離婚して、シングル・マザーとして中学生の娘(金澤美穂)としがないアパートで平凡に暮らしています。で、彼女達の隣の部屋で独居しているのが石神という次第です。
さて、ある夜、花岡家に元亭主がやってきます。
それからしばらくしたある日、そのアパートの近所の川沿いで、顔を徹底的に潰され、指を焼かれた男性の惨殺死体が発見されます。男性の身元は当然、判りませんが、殺人事件には違いありません。内海はこの事件について(毎度のことながら)湯川に相談しますが、湯川は事件そのものには興味がなく、石神がその事件の周辺にいることを知ると、事件そっちのけで石神にコンタクトを取ります。実は、石神は湯川の学生時代の知り合いで、湯川をして「天才」と言わしめるほどの傑物だったのです。もちろん、石神も湯川を知っています。理数系の同志である2人は、再会し、旧交を温めるのですが━━
本作の観客動員数は370万人以上を数え、興行収入は49億円以上だったと聞きます。要するに大ヒットした映画ということですが、それもむべなるかなと肯うほどの完成度は達成していると思います。
なお、本作が公開された日、テレビでは単発ドラマ『ガリレオ エピソードゼロ』が特番として放送されました。ドラマは、内海と出会う前の湯川をフィーチャーしたもので、そこには石神もちらっと出ています。