『ザ・ルネッサンス』
アルフィーの「暗黒時代」の終焉
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『ザ・ルネッサンス』
1984年7月5日発売
ポニーキャニオン
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01. 孤独の美学
02. 愛の鼓動
03. 真夜中を突っ走れ!
04. 二人のSEASON
05. 星空のディスタンス (Long Version)
06. GATE OF HEAVEN
07. 鋼鉄の巨人
08. NOBODY KNOWS ME
09. STARSHIP -光を求めて-
10. 永遠の詩
※青い下線は執筆者推薦曲を表しています。
作詞:高見沢俊彦(一部高橋研と共作)
作曲:高見沢俊彦
編曲:アルフィー(一部井上鑑と共作)
プロデュース:アルフィー
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昨年(2017年)、B’zがロック・イン・ジャパン・フェスに初出演した。それがどうした、と言われるかも知れないが、まぁしばらくお付き合いを。その際に彼らは自身のコピーに「The only surviving hard rock band in Japan」というのを掲げていたのである。直訳すると「日本のハード・ロック・バンドの唯一の生き残り」か。私は訝った。誰がこんな恥ずかしいハッタリを考えた。いや、アルフィーがいるじゃないですか、と進言できるような、少しは日本のポップスに通じたスタッフは誰かいなかったのか、と。
B’zがバンドを名乗るのも納得できないけどさ(だって2人組じゃんね)、かと言ってアルフィーがハード・ロックの人たちというのも、それはそれで得心が行かないなぁ。そう思われる方は彼らのアルバム『ザ・ルネッサンス』を聴いてみてください。たぶん得心が行くはずです*。
念のためにと断っておく。B’zのデビューは1988年、アルフィーは1974年。当然、アルフィーの方が(超がつくほどの)先輩である。
「ルネッサンス」という言葉自体は、学校の社会科の授業などで聞いたことがある人が大半であろう。中世の終わり、近世のはじまり。日本語では「文芸復興」だったか。もう覚えていないな。いずれにせよ、「ザ・ルネッサンス」といえば数百年前のヨーロッパで起こったその文芸復興のことを指す。冠詞のザが付かない一般名詞では、「復活」などの意味がある。
なんで文芸復興なのか。歴史の授業ではないのだが、一応、講釈を付け加えておく。中世のヨーロッパでは教会が絶大な権力を持っていた。当然、学問は神学のみ。他の学問は一切禁止。そうしないと教会の威厳が損なわれてしまう。そんな歳月が気の遠くなるほど長く続いた━━ちなみに一切の学問や芸術が禁ぜられたその何百年かは「暗黒時代(The Dark Ages)」とされている━━。それじゃ進歩なんてありゃしないね。その通り。だから学問だとか芸術だとかが何百年の時を経て復興したことはヨーロッパ史上の大事件だったのである。それが「文芸復興」。
ではそれがアルフィーとどう結びつくのか。あくまでも推測である。アルフィーのリーダーはデビュー以来、坂崎幸之助が務めていたのであるが、商業的にはパッとしなかった。翅のない蝶々みたいに。当然、レコード会社をクビになった。その後、なんとか再デビューを果たすも、試行錯誤が続く。どうすれば売れるのか。あるとき、リーダー交代が起こった。坂崎から高見沢俊彦へ。それが1982年頃。
リーダー交代により、高見沢の嗜好や意向が大きく反映されることになった。ハード・ロック、ヘヴィ・メタル、プログレッシヴ・ロック。『ザ・ルネッサンス』ではそのあたりの音楽性が、夏の夜空に打ち上げられた菊先花火のように、鮮やかに炸裂している。ヨーロッパに「個」という概念が確立されたのはルネッサンス期以降とされているから、アルバムのタイトルは、そんな所とも関係があるのかも知れない。
けれども一番のトピックは、高見沢がリーダーになったら売れた、ということだった。「メリーアン」「星空のディスタンス」「シンデレラは眠れない」など、レコードが何十万枚と売れる大ヒットが続いたのである。マジかよ、すげぇ。こりゃアルフィーの暗黒時代の終わりだな。ルネッサーンス! と、メンバーは思ったのではないかと愚考するのだけど、どうなんでしょうね。
*もっともアルフィーは自身をハード・ロック・バンドとは位置づけていない。ジャンルにとらわれずに活動をしていきたいと考えているようである。とはいうものの、ハード・ロックを演るバンドであることには(ハード・ロックも、というべきか)違いない。「無言劇」など、フォーク時代のアルフィーにも良い曲はあると思うけど。
『ベスト・イヤー・オブ・マイ・ライフ』
オフ・コースの終わりのはじまり(陳腐に言えば)
『人気者で行こう』
サザンオールスターズが引き受けた「ポピュラー」