KPPと聞くと、吉本新喜劇を観ている人は川畑座長の「顔パンパン」をつい思い浮かべてしまうでしょう。しかし一般的に言えば(これもどのくらい「一般的」なのかは疑問ではありますが)きゃりーぱみゅぱみゅのことらしいのです。したがって『KPP BEST』とは、きゃりーぱみゅぱみゅのベスト・アルバムのことなのです。初回限定盤は、「きゃりーぱみゅぱみゅ超限定リアルお顔パッケージ」仕様の2枚組+中田ヤスタカによるセルフ・リミックス10曲を収録したCD及び今回のベスト盤のために制作した映像を収めたDVD付きの4枚組。
ちなみに上の段落の文章を早口で正確に音読できる人は、はてしてどのくらいいるのでしょうか? まぁそんなことはさておき。
きゃりーぱみゅぱみゅのデビュー5周年を記念して出されたこのベスト・アルバム。その内容は言わずもがな、5年の間に出してきた代表曲でかためられています。聴いてみると「あ、これ聴いたことある」とか「あ~、あったなぁ、こんな曲」とか言ってしまうことでしょう。それはつまり2010年代の音楽シーンに彼女が(もしくはプロデューサーの中田ヤスタカが)確かな爪痕を残したということです。
ベスト・アルバムの構成としてはどうでしょうか。内容がちょっとヴォリューミーというか(どの曲も調子が似ていることもあって)聴いていて飽きがきます。以前
MOMAさんがおっしゃっていたように、活動5周年くらいなら1枚に凝縮したほうが訴求力やアイテムとしての価値はあったように思います。
訴求力の弱さは売上にも出ています。オリコンによると、このベストの累計売上枚数はおよそ6万枚。ファースト・オリジナル・アルバムの『
ぱみゅぱみゅレボリューション』が20万枚を超えていたことを思うと、隔世の感すら覚えます。
きゃりーぱみゅぱみゅというコンテンツが国内マーケットでは飽きられてきたこともあるでしょう。先述のように、似たタイプの曲ばかりですから(その類似性がタイアップ先などに求められてきたなどの事情もあるでしょうが)。このまま、つまり可愛さを売りにしたロリータ・ポップスの路線を行くのなら、国内ではジリ貧になるしかないでしょう。彼女の姉貴分である
Perfumeの場合は、「TOKYO GIRL」などのような「ちょっと大人の私達」という新機軸を作り、未だ好調なわけですから、きゃりーの場合も年齢相応に「脱カワイイ」路線を構築できるかどうかが鍵なのかもしれません。
一方、きゃりーが国内マーケットの事情に左右されるのは愚かしい、との見方もあるでしょう。事実、このベスト盤の発売と同時期に彼女は3回目のワールド・ツアーを敢行しました。オーストラリア、サンフランシスコ、イギリス、台湾など世界中で彼女は(少なくとも2016年の段階では)支持されていたわけですから、放っておいてもジリ貧の国内市場なんて相手にする必要はないのかもしれません。
しかしねぇ。このままの路線を続けたら、彼女の行き着くところは林家パー子でしょう。別にパー子さんを悪く言うつもりはありませんが、それは「きゃりーぱみゅぱみゅ」としては違うのではないかと思うのです。デビュー当時は未成年だったきゃりーも今や20代半ばの大人の女性です。今後どうするんでしょう、と言うと何だかおせっかいな親戚のオジサンみたいになってしまいますが、いずれにせよ彼女の青春時代の活動が、わかりやすく収められている盤であることには違いありません。