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『絶対チェッカーズ!!』
でもそこにどれくらいチェッカーズがあるのだろう

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『絶対チェッカーズ!!』
1984年7月21日発売

キャニオン・レコード

01. 危険なラブ・モーション
02. HE ME TWO(禁じられた二人)
03. ウィークエンド アバンチュール
04. 渚のdance hall
05. ギザギザハートの子守唄
06. 涙のリクエスト
07. MY ANGEL (I WANNA BE YOUR MAN)
08. ガチョウの物語
09. ひとりぼっちのナタリー
10. ムーンライト・レヴュー50s’



青い下線は執筆者推薦曲を表しています。


作詞:藤井郁弥(01、03、04、08)
   売野雅勇(02、06、09、10)
   康珍化(05)、高杢禎彦(07)
作曲:芹澤廣明(01、04~06、09、10)
   鶴久政治(02、03)
   武内享(07)、大土井裕二(08)
編曲:芹澤廣明(01~06、09、10)、
   チェッカーズ(07、08)

『絶対チェッカーズ!!』は、チェッカーズのデビュー・アルバムである。けれどそこにうかがえるのは、彼らの音楽性というよりは秋山道男のヴィジョンな気がする。彼のヴィジョンが一番色濃く反映されたのがこのアルバムではないか。そう思っている。何のこっちゃわからない。そりゃそうだ。おいおい説明を交えながら論じていくつもりだが、ともあれ、もしかしたら人々がアイドルに期待しているのは偶像性のみであり、その人の個性だとか人間性だとかは求められていないのかなと、やや暗澹たる気持ちになる。

秋山とは何者か。編集者であり、ディレクターである。要するに、ある対象を最も見栄えのする形、その魅力が人々に最も伝わる形にして世に送り出す、そういう仕事の人である。「仕掛け人」と言っていいかもしれない。彼はチェッカーズという福岡出身のバンドを手掛けた。チェッカーズがどうすれば人口に膾炙するか、どうすれば人気者になるか。結果から言えば、彼のディレクションは成功したと言えるだろう。話はチェッカーズのデビュー前夜に遡る。

彼はまずチェッカーズの音楽性とファッションの方向転換に着手した。それまでのバンドの方向性は、矢沢永吉の在籍していたキャロル、つまりツッパリ・ロックだった。頭だってリーゼント。そんなもの、これからの時代に流行りゃしねぇよ。キャロルは70年代中盤の人気者だったから、80年代の当時においては彼の考えは的を射ていた。アイドル的に売り出そう。そのためにはメンバーの作品より外部作家の作る「商品」の方がツールとしては良い。彼はそう踏んだ。かくしてチェッカーズは他人の作った曲で一躍世に出たのである。

彼のディレクション、あるいは「編集」はとことん奏功した。このデビュー・アルバムとてオリコン週間1位を獲得。80年代中盤、チェッカーズの楽曲はもちろん、ブロマイドなども飛ぶように売れるようになっていた。押すに押されぬ人気者。スター街道まっしぐら。

アルバムの楽曲群のうち、過半数にメンバーは携わっている。しかし肝心の、求心力のもととなるシングルは、すべて外部作家の手によるものだった。だからこそウケたんだろう。でも当然ながらそれはバンドが自力で勝ち取った栄光とは形容しがたい。

今なら秋山の所業はヘヴィ・エディッティング(過干渉)だと非難されるかもしれない。バンドの個性を大事にしろと。私はと言えば、「編集」としては行き過ぎた感があると思うものの、秋山のしたことをそこまで責める気にはなれない。バンドをどうアピールするかを優先すれば、ああいう選択肢もあるかもな、と。ポピュラー・ミュージックと言うくらいなのだから、どんな歌手でもどんな楽曲でも、人々に知られなければなんにもならない、というのもひとつの考え方ではないか。そう思う。

けれど一方でこうも思う。あれはドーピングみたいなものだ。薬物で一時的に驚異的な記録を叩き出すことはできるだろう。でも長い目で見れば、そのアスリートは弱い酸に蝕まれるようにゆっくり、しかし確実にダメになる。チェッカーズはメジャーで約10年活動した後、解散に至った。詳しい内情は知らないが、そういうところがあったんじゃないかと邪推している。

だが本当の問題は他にある。それは、当時チェッカーズを支持していた人たちは何を支持していたのかということだ。彼ら(彼女ら)はチェッカーズを愛していたのだろうか。それとも秋山が精巧に作り上げた偶像(アイドル)を希求していたのだろうか。結論は簡単には出ない。何が偶像で何が実体かはクリアに線引きされているわけではないから。ひとつ言えるのは、秋山が作り上げた幻想(偶像性)なしでは、彼らがチェッカーズに出会うことはなかったろう、ということだ。


F-BLOOD オフィシャルサイト







 

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