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『evergreen』
That’s My Little Lover’s Happiness

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もしもポップスが世に対して働き掛ける役割を持つのなら、それは聴感上、あるいは体感上の充足感なり幸福感なりを提供することに尽きると思う。そういう意味で、「至上のポップス」と表現できるアルバムは本当に数少ない。音楽は人それぞれ好みが異なる上に、出会いのチャンスも決して平等ではないからだ。

小林武史プロデュースのもと、AKKOと藤井謙二から成るユニット、マイ・リトル・ラヴァーは1995年にデビューした。その年に出した彼らのシングルはいずれも日本国内でヒットし、それを収録したファースト・アルバムも同年内にリリースされ、爆発的なヒットを記録した。それが、『エヴァーグリーン』であり、上述した「至上のポップス」たる名盤のひとつである。


evergreen
1995年12月5日発売

TOY'S FACTORY

01. Magic Time
02. Free
03. 白いカイト (Album Version)
04. めぐり逢う世界
05. Hello, Again ~昔からある場所~
06. My Painting
07. 暮れゆく街で
08. Delicacy (Album Version)
09. Man & Woman
10. evergreen


青い下線は執筆者推薦曲を表しています。

プロデュース: 小林武史

マイ・リトル・ラヴァー。直訳すれば「私のちいさな恋人」「年下の恋人」だが、この直訳から伝わるニュアンスと『エヴァーグリーン』が具え持つ音楽性は、限りなく等しい。恐らく、あなたのイメージする「マイ・リトル・ラヴァー」が、そのまま『エヴァーグリーン』の中に隠れているはずだ。

デビュー当時独特のAKKOのつたない歌唱であったり、トキメキとためらいを恋心で織り交ぜたようなリリックであったり、小林武史の十八番である、「色々な音が鳴っているはずなのにシンプルに聴こえる」サウンド・アレンジであったり・・・いずれもクオリティは高く、このアルバムから香る幸福感は、ちょっとのファンタジーでありながらも、何処までも私たちの「身近」に寄り添ってくれる。

言うまでもなく、ポップスは時代によって変わる。歌は世につれ、世は歌につれというように、世が歌にどこまでつれているのかはともかく、音の構造であったり、聴こえ方であったりが時代によって目まぐるしく変わるたぐいの音楽なのだ。

しかし一方で、「普遍的な素晴らしさ」というのも我々の中に存在するはずで、その実例が『エヴァーグリーン』にあるのではないだろうか。エヴァーグリーン、常緑樹という意味であるが、ここに収録されている10曲は、正しく「日本のポップス」の常緑たりえる10曲だろう。やはり「至上のポップス」なのだと思う。



My Little Lover OFFICIAL WEBSITE







 

『9.5 カラット』
井上陽水、36歳。職業: 歌手

『ナイアガラ・カレンダー’78』
大滝詠一のセンスと愛郷心が光る迷盤、いや名盤!