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『がらくた』
桑田佳祐に問われる、ジャンクの価値

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みなさん、こんにちは。本日は桑田佳祐の5枚目のオリジナル・アルバム『がらくた』についてです。とは言いましても、初回盤(A、B共通)にはご本人によるエッセイが付属しているのですが、はっきり言いますと、これでこのアルバム(の楽曲)についてどんなものかというのは、概ね合点がいくと思います。だから私が今更どうこう言うのは蛇足もいいところでしょう。ですから申しません。


『がらくた』
2017年8月23日発売

Victor Entertainment
01. 過ぎ去りし日々(ゴーイング・ダウン)
02. 若い広場
03. 大河の一滴
04. 簪 / かんざし
05. 愛のプレリュード
06. 愛のささくれ~Nobody loves me
07. 君への手紙
08. サイテーのワル
09. 百万本の赤い薔薇
10. ほととぎす [杜鵑草]
11. オアシスと果樹園
12. ヨシ子さん
13. Yin Yang(イヤン)
14. あなたの夢を見ています
15. 春まだ遠く


青い下線は執筆者推薦曲を表しています。

全作詞・作曲:桑田佳祐

ただ、日本のポップス史に名前を残すであろう桑田佳祐ほどの人物が、自身の最新作に「がらくた」と名付けたこと、そしてがらくたの意義についての考察なら、私なんぞでも述べるに値するものかと愚考し、ここにしたためる次第です。

桑田さんはポール・マッカートニー大好き人間ですから(「オアシスと果樹園」を聴けば、彼がいかにメロディ・メイキングにおいてポールから影響を受けたかが分かります)、ポールの「ジャンク」という楽曲からヒントを得た。それくらいの推測は容易にできます。

また歌手としてもバンド(サザン)としても大御所となり、いきおい大作を求められ続けたのが桑田さんの昨今です。もうちょい気を抜いて、気心の知れた仲間と気軽に音楽を演り、軽い気持ちで作品を世に出したい。そんな気持ちから「がらくた」と名付けたのでは。そう考えられなくもありません。


いかな理由であれ、「がらくた」と名付けられた以上、この作品は「何だよ、無意味なもんなんじゃん」とのそしりを免れません。そこは仕方ないところです。しかしがらくたは果たして無意味なんでしょうか。いや、そもそも無意味だから不要だとか無価値だとか、そういうものなんでしょうか。私はそこが問われている気がするのです。

ちょっと生物学の話に飛ぶのですが、私達のDNA、ヒトゲノムはその9割以上がジャンクだとされています。何に使われているのか分からないと。正確に言うならば、それらの意味を定義できる明晰さを、私達は未だ持ち合わせていないというところでしょうか。一昔前は、ヒトゲノムの解析が進めば、人間の神秘が解き明かされると信じられていました。そんな単純なものじゃなかったんですね。

この『がらくた』も同様ではないでしょうか。ジャンクかもしれない。けれど取り敢えず桑田さんがこしらえて現実に存在するんだから、意味や価値など考えず、その音に身体を委ねて楽しむが吉なのではないか。そもそも意味のあるものしか身の周りにないというのは、乱暴な言い方になりますが、狭量な人生です。だって今の自分の測量可能な要素しか周りにないんですから。不確実性である未来など、そんな人には訪れようがない。

「がらくた」。だけど良いと思ったら取り敢えず手に取ってみては。桑田さんからのそんな提案として、このアルバムはあるような気がするのです。


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