日本語 | English

■ 一時休止いたします。







Atom_feed
イミテイション・ゴールド~金爆の名曲二番搾り~
これはオマージュか?パロディか?

LINEで送る

『イミテイション・ゴールド~金爆の名曲二番搾り~』
2009年1月1日発売
トレカ(兼・歌詞カード)5枚入り

01. アナザ・メロディ
02. ツナミのジョニー
03. セイ・ノー
04. ウルトラ・ファントム
05. 万の夜をこえて
創作活動において重要なのは、作品を作ろう・新しい世界を知ろうとする「外への衝動」と、自らの内に眠る無意識・記憶を掘り下げる「内への衝動」の二つとされる。レオナルド・ダ・ヴィンチが「孤独が嫌いな者は、創作に向かない」と云ったのは、この二つの要素に時間を割くことが、何かを作るという行為にとって重要であることを示唆していると言えよう。

さて、「ヴィジュアル系」という言葉が定義するのは、恐らくは「自らに化粧を施したハデな歌手、もしくはバンド」であろう。それは、極端な話がメイクさえしてステージに立っていればどんな音楽をやっているかは問題ではないということだ。そう、たとえ実際に演奏していなくても。

二〇一〇年前後、日本国内で爆発的にポピュラリティを得たヴィジュアル系エア・バンド(アテ振りのみで演奏しないバンド)といえば、金爆ことゴールデンボンバーだ。ヴォーカルこそ唄うものの、ギターもドラムも演奏はせず、空振り。挙句の果てには踊りだしたりコントをかましたりする始末である。

彼らの真髄は、「ヴィジュアル系は音楽性云々より見た目だ」という、世間の差別的とも言える常識を熟知した上での仰天パフォーマンスにある、と形容していいだろう。テレビだろうとライヴだろうとその精神にはブレがなく、彼らは懸命に捨て身のパフォーマンスを繰り広げる。「一体この人たちの本職は何なんだろう」と、マジメ人間みたいな疑問を持ってしまう方も多いはずだ。

では、彼らの音楽には価値がないのか、というと実はそうでもない。それは、二〇〇九年元日に発売されたミニ・アルバム『イミテイション・ゴールド~金爆の名曲二番搾り~』を聴いてみれば、すぐにおわかり頂けるかと思う。

四曲目:<ultra PHANTOM>とタイトルを見てもわかるように、全曲有名なJポップ楽曲をもじったパロディが満載なのである。しかし安易なモノマネに留まらず、元ネタのクセなどを絶妙なバランスで取り入れているため、元ネタ歌手のファンほど楽しめる、「彼らのファン以外」を射程に入れたクセ者アルバムなのである。

すべての楽曲は、ヴォーカルにより作詞・作曲されているのだが、このアルバムで彼は自分が影響を受けた楽曲たちを、顕微鏡で見るがごとく徹底的に、それでいて構造的に理解し、同じポップスという土俵の上で表現してみせた。冒頭の例で言えば、「内への衝動」に特化している。ゆえに、ここに収録されている五曲は、彼を、ひいてはゴールボンボンバーを知る最短ルートにもなり得るのだ。

猿真似というレベルではなく、音楽という面でのリスペクトとユーモアに満ちたデディケーション、「オマージュ」(尊敬する作家・作品等に影響を受け、似たような作品を創作する事)に相当する。ゴールデンボンバーのエンタメ精神と相まって、きっと聴く者を、それは元ネタを知らない者をも含め、楽しませる非常に有用な作品だ。


ゴールデンボンバー ウェブサイト
YouTube 公式チャンネル








 

『誰もがエリカを愛してる』
あがた森魚による、日本のタンゴ・マスターピース

THE ROSE GOD GAVE ME
清春による“バンド表現”のピーク