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『デリシャス』
JUJUの早すぎたドリームズ・カム・トゥルー

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ポップ・シンガー、JUJUが2011年に発表した『デリシャス』にはブルーネスが足りない。と、これで「以上終わり」となってしまうのは、何とも無愛想ですし、何よりもご本人や関わられたスタッフや演奏家たちに大変失礼ですよね。まぁでも結論はこうだということです。取り敢えず。

さて、ではまずは本作が制作、発表された経緯からあたっていきましょう。物事には順番が肝心ですからね。そもそもなぜJUJUさんは、ポップスの人なのに、ジャズものを出したのか?

「DELICIOUS」 JUJU
2011年11月30日 発売
Sony Music Associated Records

1. A Woman Needs Jazz
2. You'd Be So Nice To Come Home To
3. Night And Day
4. Candy
5. Cry Me A River
6. Girl Talk
7. Lullaby Of Birdland
8. Moody's Mood
9. Quizas, Quizas, Quizas
10. Calling You
11. Ev'ry Time We Say Goodbye
12. Lush Life
13. みずいろの影


プロデュース:松尾潔

JUJUさんは12歳の頃からジャズ歌手になりたかったそうです。私が12歳の頃なんて「なりたいもの」は、まぁ漠然とありましたけどそこにリアリティはなかったです。子供の自分と「その職業に就いている自分」との距離感が不明だったと言っていいかもしれません。だから結果的にJUJUさんは、その距離を適切に詰めて、子供の時の夢を叶えた人なんですよね。これは凄いと素直に思います。

やがてJUJUさんは挫折を味わいながらもポップ歌手として大成。TVドラマで、コマーシャルで、彼女の歌声が聴こえるようになりました。そういった成功によってレコード会社からもお許しが出たのでしょう。彼女のヴォーカルによるジャズ・アルバムがとうとう作られることになったのです。そしてできたのが『デリシャス』というわけです。パチパチパチ。

ドリームズ・カム・トゥルー。おめでとう、ですよね。しかしはっきり言って、そんな経緯だけで「良いジャズ」ができるもんじゃないんです。

CDプレイヤーに『デリシャス』を入れます。プッシュ・プレイ。オリジナル曲「ア・ウーマン・ニーズ・ジャズ」が、JVCのウッド・スピーカーから響いてきます。悪くない。バックに流れる演奏もJUJUさんの歌唱も決して悪くない。でもそれだけなんです。ここにはジャズに求められるはずのブルーズと、心の底から湧きあがってきたようなうねりは感じられない。天つゆのかかっていない天丼みたいだ。言うなれば「ジャズ風味のポップス」なのです。

だからポップスのリスナーには聴きやすいと思います。或いはポップスとして聴くのが正解なのかもしれません。しかしこれがかつて彼女が夢見ていた「ジャズ歌手」なのかと言うと、失礼ながら、ノーではないか。そう思います。

圧倒的に足りないのはブルーネスです。これは残念ながら、テクニックでどうこうできる代物ではない。人生の山道をさまざまな靴を履きつぶしながら踏破することでしか恐らくは獲得できないと思います。少なくとも大抵の人には。ゆえに、彼女がもう少し歳を重ねた時に、粘り気と重みを増したであろう歌声で、もう一度トライして頂きたい企画ではあります。そして、その時が来ることを楽しみにしています。早すぎたのです。本当に。



JUJU公式サイト






 

『ブルー・セレクション』
ジャズで再構築される、井上陽水とその楽曲

『ジブリ・ミーツ・ジャズ』
確かに立石一海トリオのジャズだけれど