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『ヒトリトイロ』
宮本佳林のソロ・デビュー・アルバムは

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ファースト・アルバムらしいファースト・アルバムだな━━と思いました。

ファースト・アルバムとは、多くの歌手にとって「デビュー・アルバム」でもあります。だから歌手もソングライターもプロデューサーもエンジニアも宣伝担当も、どういう方向性でどういう仕事をすればいいのかに関して共通理解が(たぶん)ありません。果たしてその歌手にとっての「最適解」はどのようなものか? それがなかなか判じないということです。その際に、明確な旗印を掲げて「こういう方向でやればいいんだよ」と皆を誘導してくれる存在がいることもあれば、いないこともあります。

「たぶん明確な旗印がなかったんだろうな」というファースト・アルバムは、ある意味で分かりやすいです。それは「ヴァラエティに富んでいる」と言える内容になりがちだからです。誰もその歌手についての「正解」が分からない。だからとりあえず、いろんなタイプの歌を唄わせます。どれかは当たるはずだという「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」式ソリューションです。

それでファースト・アルバムというのは、往々にして「その歌手のキャリアの中で最もヴァラエティに富んだ作品」になったりもします。そこからその歌手に合った音楽性をジャッジ、取捨選択して、以降の制作活動に活かす。これはポピュラー音楽の常道と申し上げていいでしょう。私が本作を「ファースト・アルバムらしいファースト・アルバム」と評するのは、こうした意味合いにおいてのことです。

宮本佳林(1998-)は、もともとアップフロントが主宰する「ハロー!プロジェクト」の一員でした。女性アイドル・グループ「ジュース=ジュース」のオリジナル・メンバーとして2013年にメジャー・デビュー。2020年まで同グループで歌手活動を展開します。同年末にグループを「卒業」してからはソロ歌手になり、翌2021年末にはデビュー・シングルをCDで発表。年が明けて2022年の夏にはセカンド・シングルをリリースし、その流れで10月に発売されたファースト・アルバムが、『ヒトリトイロ』です。


『ヒトリトイロ』(初回生産限定盤C)

2022年10月12日発売
アップフロントワークス

01. なんてったってI Love You
02. 自分ファースト
03. 若者ブランド
04. どうして僕らにはやる気がないのか (2021)
05. 愛してるの言葉だけで
06. 優柔不断だね、Guilty
07. イイオンナごっこ
08. ハウリング
09. Happy Days
10. 規格外のロマンス
11. タメライ
12. 未来のフィラメント
13. 氷点下
14. 落ちこぼれのガラクタだって
15. 夜明けまでのララバイ
個人的な話をすれば、私はジュース=ジュース時代の宮本をリアルタイムで知りません。彼女の存在を認識したのは、確か昨年(2021)末のことでした。ユーチューブ上に宮本と、やはり同グループに所属していた金澤朋子が、ヴィデオ・ゲームをプレイしながら実況する番組があり、それを観たのですが、いや、凄まじかったですね。腹部が痛くなるほど笑いました。

その感興で、同じくユーチューブで公開されていた宮本のデビュー・シングル「氷点下」のプロモーション映像を拝見。一聴して惚れ込みました。たぶん冬の曲と言っていいであろう、このクオリティな歌曲に深く魅入られ(今でも折に触れてCDで聴いています)、宮本佳林という名前が、頭の片隅に刻み込まれた次第です。

今夏リリースされたセカンド・シングルは正直、今一つでした。初回限定盤にのみ収録されていた「少女K」というKポップライクな曲は、わりと好きですけど(ところどころ日本語が聴き取りにくい点もKポップっぽいですよね)。ファースト、セカンド、どちらにもさまざまなカラーの曲が収録されていて、もしかしたら宮本佳林という人は、いろいろなタイプの歌を唄いたいのかなと思わせて、10月にファースト・アルバムを出すという。タイトルは「ヒトリトイロ」。そのものズバリと言うほかないでしょう。


冠されたタイトルどおり、本作のテーマは「能うかぎり百面相を演じる」なのでしょう。それが宮本の意向なのかどうかは知りませんが、とりあえず本作のプロダクションの指針は「いろいろなタイプの歌を唄う」だったと。

でもそれなら━━と難点を挙げます。それはアレンジメント(編曲)の方向性が似たり寄ったりの曲が多いように感じられることです。そこで結構、損しているんじゃないかなと。料理でいえば、種々様々の食材を駆使したコース料理なのに、味付けはほぼ同じ、みたいな。本作の楽曲群のバランスを考えると、スピッツの「ジュテーム?」やミスチルの「ミラー」みたいな、あっさり仕立の小曲があってもよかったと思います(全力投球的な歌が続くと、リスナー側も疲れてくるんですよね)。ジュース=ジュースの後輩メンバー井上玲音とのデュエットとか、なかなか良かったですし。


そういう点を残念に思いますので、本作を手放しで持ち上げたりはしません。でも宮本佳林の次回作には期待したいと思います。オリコンの週間アルバム・チャートでは最高10位だったので、もしかしたら予算面では厳しくなるかも知れませんが、頑張ってください。


宮本佳林|J.P ROOM Inc





 

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