Disc 2 「evergreen+」
01. Magic Time
02. Free
03. 白いカイト
04. めぐり逢う世界
05. Hello, Again ~昔からある場所~
06. My Painting
07. 暮れゆく街で
08. Delicacy
09. Man & Woman
10. evergreen
※青い下線は執筆者推薦曲を表しています。
プロデュース: 小林武史
My Little Loverが今年11月25日に発表した『re:evergreen』は、自身最大のヒット・アルバム『evergreen』(1995)への返信とも言えるアルバムです。2CDあり、内容は、『evergreen』のテイストを現在のMy Little Loverで励起したニュー・アルバム「re:evergreen」と、『evergreen』の、当時は打ち込み演奏だった部分を生楽器に置き換えた、いわば一種のリミックス・アルバムでもある「evergreen+」になります。
ある意味では、懐かし需要に応えている今作ですが、巷にあふれるリイシュー商品とは決定的な違いがあります。それは今回、My Little Loverは、丁寧に自分たちの過去と向き合い、音楽家として、それを現在に表現しようとした、つまりは新しくオリジナル・アルバムを発表するやり方で、過去に応えようとしている点です。ここに、プロデューサーである小林武史の良心と意地を見た気がします。
楽曲は、『evergreen』の再来とも言える、高品質なポップスそのものです。CDをセットし、「winter song が聴こえる」が始まりました。フィル・スペクターや大瀧詠一がこよなく愛した、ウォール・オブ・サウンドのポップ・ソングが聴こえてきます。全編、ゼイタクなまでに生楽器を用いてこその音楽は、現代には逆に新鮮であり、ある種のアンチテーゼでもあるかのようです。
時間と共に、人も街も、目に映るすべては変わっていきますが、では進歩しているかと訊けば、疑問符です。裏を返せば、時間に左右されない不変性とは、見えないところにこそ存在し得るのです。『re:evergreen』は『evergreen』への返信であると同時に、この20年という歳月を経た我々の内に潜む、「相変わらずな何か」を想起させてやみません。無論、それはMy Little Loverの、ポップスに対する愛と誠意が根底にあってこそ、なのです。