『Just LOVE 』 だからこそ彼女は「LOVE」を伝え続ける
『Just LOVE』
2016年7月13日発売
SME Records
01. *Prologue* ~Let's go~
02. Have a nice day
03. You & Me
04. トリセツ
05. YEAH
06. Wish Upon A Star
07. 君が好き
08. もしも運命の人がいるのなら
09. Thank you very much
10. Holiday
11. I wanna see you dance
12. Set me free
13. Life Is Good
14. あなたの好きなところ
15. *Epilogue* ~Just LOVE~
※青い下線 は執筆者推薦曲を表しています。
Total Time: 59分24秒
みなさん、こんにちは。今回取り上げるのは西野カナさんの6枚目のスタジオ・アルバム『Just LOVE』です。彼女のこれまでのスタジオ・アルバムのタイトルには総て「LOVE」が付いていましたが今回も例に漏れず(そして次作も)。
西野カナさんというと「歌詞が薄っぺらい」「恋愛依存症みたいで怖い」「会いたくて震えてろ」などとディスられるのがお定まりみたいになっています。私なんかからすると、ドリカムがブレイクしていた頃にもそんなアンチ・コメントを聞いた気がするなぁ、とデジャヴなんですけれども(笑)。
つまり聴く人は歌詞をしっかり聴いているわけです。これはヴォーカリゼーションや滑舌がしっかりしている証拠で、わかりやすく言うと、歌が上手いからだと思います。彼女はメジャー・デビュー前に民謡の訓練も受けていたと聞きます。歌手としての基本が盤石にできている。実はこれが西野カナさんの最たる強みではないかと、私は愚考しています。
また西野カナさんといえば、安定したチャート成績でも知られています。実際moraの「2015年間ダウンロードランキング(総合部門)」ではトップ20中3曲は彼女の歌でしたし、レコチョクの同年間ランキングでも同様でした。ブレイク当時ならいざしらず、そこから数年経ってもここまでコンスタントに支持されている事例は希有ではないでしょうか。
それはつまり、自作が飽和状態にならないよう、さまざまなポップスを彼女は送り出しているということです。アルバムにはお得感がないと、とは彼女の弁ですが、なるほどクラブ・サウンドものからハワイアンの要素を加味したものまで、曲調やアレンジメントにも幅を持たせる配慮が全体的に感じられます。
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ご本人曰く、今作では以前と比べると生音が多くなった、音の隙間が多くなった、とか。それはキャリアを重ねて、彼女のヴォーカルという、楽曲における最大のミソが強みを増したからそうなったのではないかと推察しますが、どうなのでしょう。
歌詞もそこまで(揶揄されるほどには)単調じゃないと思います。確かに恋愛を唄ったものが多いですが、決して淡色なものばかりではない。「トリセツ」なんて少なくとも私にはこんな歌詞は思いつかない。ご本人曰く、いろんな人に「自分の取扱説明書を書いてみてください」とアンケートをとって、それをもとに書いたのだとか。また、歌詞が長めの曲だから譜割(音符)の多い曲を選んだとも。
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以上のことから、西野カナさんという歌手は、「伝える」ということを第一義に、大切にされているのだと感じます。だからこそ同世代の女性をはじめ、幅広い世代にコンスタントに支持されているのではないでしょうか。人に伝えるコツは、わかりやすく、はっきりと、ゆっくりと喋ることだとは、プレゼンテーションや対話の際の心がけとしてよく言われることですが、それを音楽面で体現し続けているのが彼女なのかもしれませんね。
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