『RHINOCEROS』
14曲を通して打ち出される現在のポルノグラフィティ
『RHINOCEROS』は、ポルノグラフィティ(以下、ポルノ)の、記念すべき10枚目となるオリジナル・アルバム。前作の『PANORAMA PORNO』(2012年3月発売)以来となるため、インターバルは3年以上。オリコン調べでは、発売初週に4.2万枚を売り上げ、同週間アルバム・ランキング(8月31日付)では初登場1位をマークした。
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RHINOCEROS
2015年8月19日発売
SME Records
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01. ANGRY BIRD
02. オー!リバル
03. Ohhh!!! HANABI
04. wataridori
05. Hey Mama
06. 俺たちのセレブレーション
07. Stand Alone
08. ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~
09. ソーシャル ESCAPE
10. バベルの風
11. AGAIN
12. Good luck to you
13. 螺旋(Instrumental)
14. ミステーロ
※青い下線は執筆者推薦曲を表しています。
プロデュース: 田村充義
初回限定盤DVD
01. Ohhh!!! HANABI<Music Video Clip>
02. 俺たちのセレブレーション<Music Video Clip>
03. ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~<Music Video Clip>
04. オー!リバル<Music Video Clip>
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前作で、デビュー以来プロデュースを担当していたak.homma(本間昭光)がポルノとの共同アレンジから身を引いていたが、今作ではそれにとどまらず、ついにプロデューサーとしても姿を消した。つまりポルノとしては、初の本間カラーの無いアルバムということになったわけだ。
で、今作はどうなったのかというと、複数のアレンジャー、エンジニア、プレイヤー達と組み、世間が持つポルノに対するイメージに全力で応えていかんとする姿勢を打ち出している、そんなアルバムになったと思う。
彼らもデビューしてから、2015年でそのキャリアは16年になる。いわば中堅歌手だ。当然、世間が彼らに抱く印象は様々だろう。「サウダージ」のような、ラテン調の曲であったり、「メリッサ」のような、幻想的な歌詞を載せたロックであったり、アルバムで見せるシンプルなバンド・サウンドであったり、十人十色のはずだ。
『RHINOCEROS』では、その多様な要望に応える楽曲が用意されている。つまりバラエティに富んでいるわけだが、翻して言えば一貫性は無い訳だから、聴く人にとって気に入らない曲、いわゆる「捨て曲」がゼロでもない。きっと、それぞれに捨て曲があるだろう。ラテン調の曲を求める人は、「Stand Alone」や「Good luck to you」のようなギター・ポップは気に入らないだろうし、バンド・サウンドが好きな人は、「ANGRY BIRD」や「オー!リバル」に辟易するかも知れない。
しかしそれは1曲単位での話。アルバムとしてのトータリティ、全体構造は、しっかりしている。このアルバムは全曲通して、アルバムとして聴かれて然るべきアルバムなのだ。彼らは、アルバムを通して「現在のポルノグラフィティ」を打ち出しているのであり、そこは逆に聴き手が試される局面でもあろうか。確かに、1曲単位でバラ売りされる今の時代にはマッチしていない作りかも知れない。しかしだからこそ、最後まで根気よく聴いてこそ、終盤に配された「螺旋」「ミステーロ」が輝きを増すのだ。
先達が培ってきたアルバムの構造の美学、そこへのリスペクトが盛り込まれた、ポルノグラフィティの2015年の「作品」足り得よう。
『UNITED COVER 2』
「愛には形がないよ」とか言うけど・・・
『組曲(Suite)』
新しくも懐かしい、中島みゆき