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『存在理由』
2019~2020年のさだまさし

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さだまさしは多作な歌手である。そう思いませんか? 彼は1976年にソロ歌手としてデビューして以降、1年につき1枚はアルバムをリリースするというペースを(おおむね)守り続けている。そんなもんだから、さだまさし名義のオリジナル・アルバムは現時点で42作あり、それ以外にもカヴァー・アルバムやライヴ・アルバム、コンピ盤もある。もちろん、多くて悪いということはありませんが、と言って、これはどんな人にとっても「少ない」ではないでしょう。


『存在理由 ~Raison d'être~』
2020年5月20日発売

ビクターエンタテインメント

01. さだまさしの名によるワルツ
02. 銀河鉄道の夜
03. 残したい花について
04. 存在理由 ~Raison d'être~
05. 桜紅葉
06. 奇跡の人
07. ペンギン皆きょうだい2020
08. たとえば
09. 心かさねて ~長崎の空から~
10. おかあさんへ
11. 漂流
12. 柊の花
13. ひと粒の麦 ~Moment~


青い下線は執筆者推薦曲を表しています。
それはさだまさし本人にとっても同様で、だからさだは折に触れて「もう新作なんか要らないよね?」と、コンサートでファンに訊くこともあるそうです。しかしそう問いかけられたファンは、必ず「要る」と答えるという。なんとも微笑ましい関係ですね。ともすればさだまさしのオリジナル・アルバムは、今さだまさしがどういった状況にあり、何をどのように考えているかを年に1回知らせる、年賀状や連絡帳のような役割を担っているのかも知れません。商業的にどうとかは、恐らくほとんど問われない。

本作『存在理由』のメインの役割も、そういうものかも知れない。2019年のさだは、セルフ・カヴァー・アルバムを2点出したものの、新作の発表はなかった。だからこそ待ち侘びられた新作。それが2020年春に出た本作の立ち位置ではないかと思います。

つまり本作は、2019~2020年にさだまさしがどういった状況にあり、何をどのように考えていたかを伝えている。そういうものだと考えて、そんなに大きく違わないと思います。「それは純粋に音楽作品としてどうなんだ?」と訝る向きもありましょうが、さだまさしには「岩波書店の雑誌にエッセイを連載したこともあるエッセイスト」という顔もあるので、歌手兼エッセイストの作品と考えれば、そういう「音楽作品」だってアリかも知れない。

そういうものだから、たとえば「ペンギン皆きょうだい2020」のような、明らかなメッセージ・ソングもあります。エッセイストとしてのさだまさしが含まれているということは、取りも直さず、イデオローグあるいはプロパガンダとしてのさだもまた本作中に介在しているわけですね。


私は「プロパガンダとしてのさだまさし」には興味がない。たとえば「ペンギン皆きょうだい2020」は環境問題をテーマにした歌で、この歌では恐らく「温暖化で極地の氷が解けてシロクマの絶滅が危惧される」が前提になっています。でも「人為的地球温暖化」は十中八九でたらめなことが世界的に明らかになっていますし、シロクマにしたって、その頭数はここ10年間で約30%増えている。きつい言い方をすれば、「プロパガンダとしてのさだまさし」は私にとっては信用に足るものではない。

ただし、じゃあ本作にはデマゴギーしかないのかというと、そうではないと思います。多くのエッセイや音楽アルバムがそうであるように、ここでは玉石混交だ、と私は思っています。まぁそういうもんでしょう。本作にはさだ本人による解説書が(いつも通り)付いているので、それぞれの楽曲の成り立ちや本人の所見についてはそちらを参考にして、どう受け止めるかは各自めいめいでよろしいかと思います。

個人的には、やはり「たとえば」に思い入れがある。この歌は小田和正が主宰するテレビ番組『クリスマスの約束』で披露されただけで、小田やさだの作品に収録されていなかった。良い曲なのにもったいないな、と思っていました。あれから12年あまりが経ち、ようやく日の目を見た。それがやはり感慨深いです。2007年、小田が還暦を迎えた年に、さだが歌詞を、小田が曲を書く形でつくられた、小田とさだとのデュエット・ソング。ああ、ようやくCDで聴けんねや、と思い、胸をはずませて本作を手に取りました。


さだまさしオフィシャルサイト





 

『marble』
私家版・山崎あおい補完計画(仮)

『日本の夏からこんにちは』
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