『THE KIDS』
サチモスの、来たるべき「完成」の前夜
「反抗期」なんて言葉があるように、若い時というのは、やたらめったら反発心が強くなります(何に反発するかは個々の環境と状況によるわけですが)。言い換えれば、成熟や成長とは、反発心を抑え、周囲との折り合いをつけていけるようになることだと思います。その意味で、サチモスの2枚目のアルバム『ザ・キッズ』は、実に若い作品だと言えるのではないでしょうか。

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『THE KIDS』
2017年1月25日発売
Space Shower Music
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01. A.G.I.T.
02. STAY TUNE
03. PINKVIBES
04. TOBACCO
05. SNOOZE
06. DUMBO
07. INTERLUDE S.G.S.4
08. MINT
09. SEAWEED
10. ARE WE ALONE
11. BODY
※青い下線は執筆者推薦曲を表しています。
全作曲:サチモス
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サチモスは2013年より活動を続けているバンドで、メンバーは全員平成生まれです。もっとも彼らのキャリアの短さや「平成生まれ」というタームだけで若いと言っているわけではありません。そもそも平成だって、もう29年になるわけですから、平成生まれだけではもうそんなに若いとも決めつけられないでしょう。
『ザ・キッズ』の何が若いのか。ここには、周囲からの自分達に対する評価、もしくはファースト・アルバムだけで決定付けられた評価に対する反発心を感じるのです。その意味で、今作はファーストがあったからこそのセカンドであるわけですし、また、彼らのキャリアの足跡としても非常に分かりやすいと思います。
彼らの音楽性は、いわゆる「オサレ」路線です。グランジやブラック・ミュージック、ロックなどを自分達なりに消化し、洗練されている(っぽい)感じに聴かせる。歌詞の日本語をどう音に乗せるかなどはまだ開発の余地があると思いますが、聴感上、概ねオサレですから、たとえばマンガにストーリー性ではなく、雰囲気やキャラクターのヴァイブスを求める類の人であれば、高確率でハマると思います。ちなみに私は初めて聴いた折、「日本版のマルーン5を目指してんのかな?」と思いました。
それゆえか彼らの音楽は(誰が最初にそう言ったのかは知りませんが)「シティ・ポップ」との評価を下されました。しかしそうではない。ほとんどのバンドがそうであるように、彼らもただ自分達が気持ちいいと思う音楽を演っているだけ、なのだと思います。実際、今作には、ちょっとあからさまには「シティ・ポップ」と呼べないであろう音楽も、多様的に盛り込まれています。
歌詞からも、また音楽性からも、彼らの反抗心、もしくは反抗的メッセージを感じ取れるのではないでしょうか。そしてその反発性が、彼らの少し不良じみた外見ともマッチし、ヒットしたのではないかと愚考します。今作の売上は、15万枚を超えました。
つまるところ彼らはまだ精神的にもスキル的にも若く、未完成なのです。だから、育ちざかりの子供が栄養を欲してやたらご飯を食べるように、とにかく何でもかんでも吸収し、トライする。時が経てば、サチモスの音楽は一旦どこかで「完成」するのでしょう。その前夜たる雑食性、勢い、反発性などが今作にはあります。大抵の大人が若い時のノリで大食いすると、胃がもたれて疲れるだけのように、今作のような雑食性は、熟年バンドには(未来のサチモスも含めて)ほとんど有り得ませんからね。

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