『妖怪ウォッチ ミュージックベスト -ファーストシーズン-』は、読んで字のごとく「妖怪ウォッチ」シリーズのテーマ・ソングを網羅したベスト・アルバムである。2014年から2015年の同アニメ主題歌、劇場版主題歌及びゲーム・ソングなどをもれなくコンパイル。ちなみに翌年の2017年の夏には今作の続編とも言える『妖怪ウォッチ ミュージックベスト -セカンドシーズン-』が発売された。
2016年秋、漫画家の
藤田和日郎先生に取材した際、取材をセッティングして頂いた小学館の編集者の方にも(先生が席を外されている間に)いろいろとお話を伺った。その中で、同社の子供向けの雑誌において「妖怪ウォッチ」はキラー・コンテンツであるとおっしゃっていた。今だから言うが、それを聞いて私は「へぇ、意外」と思った。
というのも、はっきり言って「妖怪ウォッチ」って、(2016年の秋の時点で)とうに流行りの旬は過ぎたと思っていたから。
確かに出たての頃、つまり2014年は凄まじかった。「ゲラゲラポーのうた」や「祭り囃子でゲラゲラポー」がオリコン・チャート上位に顔を出し、年末の歌番組でも唄われていたのを記憶している。また、2014~2015年あたりには地元のスーパーのパン売り場でも「妖怪ウォッチ」のキャラクターをよく見かけた。ああ、売れてはるなぁ、と思いつつ通り過ぎたのを覚えている。
それも2016年になると沈静化していたと思う。誰に聞いても、2016年の夏は「妖怪ウォッチ」より「ポケモンGO」だったはずだ。実際、音楽面に目をやると、2014年の「祭り囃子でゲラゲラポー」はオリコン・シングルチャートで2位をマークしたのに対し、2015年4月の「ゲラッポ・ダンストレイン」の最高位は44位。2015年内に(あくまで世間的に)「妖怪ウォッチ」は消費され尽くしたし、賞味期限は切れていたと言って過言ではないはずなのだ。AKB48とコラボレートした「アイドルはウーニャニャの件」(2015年)とて一般の社会人間での知名度は皆無に近いだろう。
だからしてこのベスト・アルバムが出されたタイミングは絶妙だ。野猿でいうところの『撤収』に近いものがある(わかる人にだけわかる話)。これはレコード会社やプロデューサーの英断だと思う。
収録されている音楽に関して語るところはないだろう。良かれ悪しかれ「妖怪ウォッチ」というコンテンツありきなのだから、音楽性を語ることが望ましいとも思えない。絶妙なタイミングで出されたベスト・アルバム。それ以上に言い表しようがないのだ。懐メロを収集するとき、もしくは「妖怪ウォッチ」に乗り遅れた人が音楽面で手っ取り早くキャッチアップしようとするときには、必ず役に立つはずである。