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■ 7月31日から8月30日にかけて、「エッセイ」をフィーチャーします。







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地球ゴマ
ジャイロ効果を最大限に活用した、安定が売りのコマ

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地球ゴマについて書く。そう言っておいてナンだが、地球ゴマという名の玩具はもう存在しない。それは「かつてあった玩具」なのだが、その後継的なものは一応ある。地球ジャイロである。ただし、話の眼目はあくまで地球ゴマ。その理由は後述するとして、まずは「地球ゴマとは何か」である。

もちろん、ゴマ(胡麻)の一種などではない。今を遡ることおよそ100年前の、1921年に登場したコマ(独楽)の一種である。愛知にあったタイガー商会という会社が製造、販売していたコマなのだが、同社は後継者不足を理由に2015年に廃業。それに伴い、地球ゴマも生産停止となり、94年の歴史に幕を下ろした。



昔日のタイガー商会社屋

出典:TIGER Company Nagoya 20131209.JPG
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2013年12月9日)


94年という歴史は長いか短いか? それは、自分がいるのがその中か外かで変わってくるだろう。

たとえば、2010年や1987年なら地球ゴマは絶賛生産中。そこでは多分人々は、地球ゴマを「古き良き玩具」と見なしたはずである。へぇ、懐かしいな、まだ製造してたんや、長いことようやるなぁと。ところが、2015年を過ぎれば「えっ、もう製造してへんの?」であろう。なんであれ、過ぎ去って「もう今はない」となる時が来る。そうなれば、それが有した歴史は、どんな長さであれ、短く儚いものに感じられるのではなかろうか。小学校だって、在学中は「これ、いつまで続くんだよ」と、げんなり思うことがあっても、卒業してしまえばあっという間の思い出になってしまうように。

話を戻す。「地球ゴマ」という名前の由来は何か?

地球は自転しながら公転もしている。大多数の人は小学校で習ったであろう。なぜ地球に昼と夜があるのか? 自転しているからである。地球が横にくるくる自転するので、地球上には太陽の光が当たらないエリアが常にある。そこが夜になる。また地球は、水星、金星に次ぐ太陽系第3惑星であり、太陽の周辺をほぼ1年かけて公転する。だから地球上の同じ場所であっても、太陽からの距離は時季によって変わる。これが季節の変化をもたらす。

ここからは物理の話になる。物体は、自転していると姿勢が安定する。たとえば、自転車(二輪車)は静止していると(スタンドをかけないかぎり)すぐに倒れるが、車輪が回っていると比較的安定する。これを専門用語で「ジャイロ効果」という。地球の(太陽に対しての)傾き具合がおおむね安定しているのも、このジャイロ効果によるとのことらしい。

地球ゴマはこのジャイロ効果を最大限に活用した、安定が売りのコマだった。ヒモをひっぱって一旦自転させれば、細いロープの上をコマが綱渡りしたりもする。それは「誰にでも回せるコマ」であり、誰でも気軽に「おお、すげぇ」と言われるようなワザが出来る玩具でもあった。



地球ゴマ

それは子供向け玩具であったゆえ、値段もそれなりだった。生産終了となった2015年時点で地球ゴマの値段は、サイズにもよるが、900~2000円くらいだった。まぁ子供には高いけれど、親にねだるにはぼちぼちな値段だと思う。親にとっては、そもそも"高い"うちに入らないだろう。入るのかな?

ともあれ、地球ゴマの生産は、タイガー商会と共に終焉を迎えた。このことは2015年、愛知の地元紙をはじめとする様々なメディアで報じられた。そうなると、世の常として、地球ゴマを惜しむ声が全国的に上がる。それを受けてかどうかは知らないが、同社に籍を置いていた職人が新たにタイガージャイロスコープ社を立ち上げ、地球ゴマの「後継」を発表した。それが地球ジャイロである。2016年末に予約受付を始めると、「申し込みが殺到」したという(産経新聞、2017年2月2日)。

あ、そう、良かったじゃないか。そういう人もいるだろうが、私は軽々にそう思えない。なぜか? 値段である。地球ジャイロは、2017年の時点で既に玩具とは言えないくらい高価だった。税抜価格18500円。文句なく高い。子供にはなかなか手が出ないだろう。大人だって二の足を踏むのではないか。だいたい2万円出してまでコマで遊びたいか? そう問われれば、私ならノーと答える。

今回、話の主題をあくまで「地球ゴマ」とした理由はこれである。後継として現れた「地球ジャイロ」は、玩具と位置付けるにはあまりに高価過ぎる。円安不況の当今ではなおさらであろう。そういう意味合いにおいて、玩具としての地球ゴマは、やはりもうないのかも知れない。

会社情報

・社名:タイガージャイロスコープ株式会社
・住所:〒464-0833 愛知県名古屋市千種区大島町2丁目18番地 218 HOUSE 1A
・ホームページ:タイガージャイロスコープ







 

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