はいどうも。
今回はカワダ(旧株式会社河田)のダイヤブロックで一席ということですけどもね。ダイヤブロック。大半の人は、なんらかの形で知ってはいるんじゃないでしょうかね。男でも女でも。子供の時に遊んだよとか、自分が遊んだことはないけど息子のために昔トイザラスで買ったなとか、買ったことはないけども耳にしたことはあるとか、いろんな形でね。まぁたとえ知らなくても、問題はありません。どういう玩具かの説明はしますから。
といってもね、説明だけされても大方の人には「だからなんやねん」でしょ。玩具なんですから、実際に触ってみるとかしないと、なるほどこういうもんかという理解には至らないと思います。だからここでは、ダイヤブロックは日本の近現代史において何を象徴するのかとかも、お話しできたらなと思います。どうなるかは分かりませんけども。
ダイヤブロックとはなんぞや?
ダイヤブロック ベーシック350
(写真提供:株式会社カワダ)
まぁ見ての通りというか、プラスチック製のブロックですね。カワダが長野の工場で製造しているブロック玩具です。レゴブロックと若干カブると思われるかもしれませんが、あちらはデンマークの商品で、こちらは日本製です。
こういうブロック玩具って、原理的には「積み木遊び」ですよね。そうなると「積み木遊びとどこが違うの?」ってことになりますが、ダイヤブロックの場合は、ブロック表面に凹凸があって、それをかちっと合わせて、まぁ家だとか乗り物だとかを作っていくことになります。
だから丈夫さが違うんですよね。
たとえば、子供が積み木で家を作っても、誤ってブロックにちょっと手が触れちゃったとかで、すぐに崩れてしまうとかあるでしょ。でもダイヤブロックの場合は、子供の手がちょっと触れたくらいでは、極端にどうこうはなりにくいと思います。もちろん最終的にはばらばらに出来るんですけど、積み木ほどは脆くないというか。たぶんですけど、カワダ社もそういう堅牢性を指して名称に「ダイヤ」を冠したんじゃないですかね。
で、このダイヤブロックっていろいろと前身があるんですけど、そういうのを全部すっ飛ばして、ダイヤブロックそのものをカワダ社が生産しはじめたのがいつかというと、1962年なんだそうです。
つまり、大雑把に言うと、1960年代に日本の子供は「より堅牢な積み木」で遊べるようになったということです。
発売当初のダイヤブロック
(写真提供:株式会社カワダ)
日本家屋はもともと木造建築でした。それが現在のようにコンクリート建築が主流になった契機は、1945年の敗戦だと言われています。国内の主要な都市が焼け野原にされちゃって、そこから復興しないとならなくなった。そこで人々は「今度はもうちょい頑丈な建物にしようぜ」ってなノリで、あっさりと木造建築からコンクリート式に移行したと言われています(まぁ戦後の30年間くらいは、世界は米ソ二極体制で、いつ核戦争が起こるかと危惧されていましたから、建物に頑丈さを求めるのは仕方なかったと思います)。
これは、それまでの積み"木"遊びから、もう少し頑丈な(崩れにくい)ダイヤブロックへの移行と、どこか似ていませんか? つまり当時の日本人は「より壊れにくいもの」を組織的に希求していた。だから、復興した日本でダイヤブロックやレゴブロックは普及した。そう考えても変ではないと思います。
ただ、北欧のデンマークでどうかは知りませんけど、日本のように、おおむね温帯気候の国で「建物がそこまで頑丈である(=通気性が悪い)必要があるのか?」という問題は、あるといえばあるわけです。それに、コンクリート建築だって永遠に壊れないわけじゃありません。コンクリート建築の寿命は50~60年ほどだそうですけど、そうなると、ダイヤブロックが世に出た頃に造成されたコンクリート建築は、ぼちぼち新しく建て替えないと危ないはずです。でも大半の人は、建て替えるだけの余裕がない。そもそも「より壊れにくい」建物なんてのは「壊すのにより手間とカネがかかる」建物でもあるわけです。だから多くの場合、手をこまねくだけになる。こういった、頑丈さゆえの問題だって露呈しているのが現在(2022年)なんですね。
そういう諸問題の責任がカワダやダイヤブロックにあるわけではありません。当たり前です。ただ、「ダイヤブロックを生み出した時代の思想」は、半世紀以上を経た現代では「それってどうなの?」視されうるというだけです。
近年、ダイヤブロックには「ライスレジン」っていう新素材が使われていて、原料が米なんですね。食用に向かない古米とか破砕米。これまでは廃棄されるだけだった米を、プラスチックに「アップサイクル」しているらしくて、いわゆる"環境配慮"型の素材なんですけど、たぶんカワダ社でも「これからの時代にダイヤブロックはどうあるべきか?」みたいなことを、弁証法的に思量しているんだと思います。ロングセラーってのも、楽じゃないみたいですね。