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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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スズキのレッツ
日常使いを意識した原動機付自転車

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考えようによっては、スズキというのは不思議なモーター・ブランドかもしれません。たとえば、あなたがクルマ乗りである場合、スズキという名前からどういうクルマを連想するでしょうか? 十中八九、軽自動車または「ソリオ」などのコンパクト・カーだと思います。よもやいかついスポーツ・カーとか、人懐っこさをまるで感じさせない高級車だとかは、そうそうイメージされないのではないかと。実際、彼らは一九九八年に「小さなクルマ、大きな未来。」というスローガンを公式に掲げていましたし。

ところが一転、バイクの世界ではそうではありません。二十世紀末葉に物心がついたバイク乗りには、スズキという名前から「ハヤブサ」や「カタナ」などの大型バイクを思い浮かべる人が、少なくないはずです。

もちろん、スズキはスクーターも生産しています。決して大型バイクを専らにしているわけではありません。

ただ、あくまで世間一般の印象としては、スズキのクルマは「小さめ」でバイクは「大きめ」ではないかと思うのです。クルマとバイクでここまで正反対のイメージが広範にわたって浸透しているというのは、ちょっとした不思議ではあるかもしれない。

そうした巷間の一般的イメージに逆らって、と考えたわけではないのですが、ここでは「カタナ」や「ハヤブサ」などの大型バイクは取り上げません。今回取り上げるのは、スズキの「レッツ」です。総排気量五〇cc以下、つまり原付一種免許さえ持っていれば乗れる原動機付自転車です。価格は(二〇二三年五月時点で)税込十七万千六百円。



スズキ・レッツ(2015年発売版)
File: Suzuki Let's (2015).jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2017年5月14日)

総排気量:49 cc/燃料タンク容量:4.8 L
希望小売価格:税込171,600円(@2023年)

スズキの創業は二十世紀序盤、株式会社として登記されたのが一九二〇年三月です。もともとは大正の世で織機メーカーとして成立した同社でしたが、戦後の一九五二年、自社の技術力を活かし、オートバイ事業に乗り出し、三年後に四輪車の分野へも進出します。この五〇年代半ば当時スズキが主に取り扱っていたのは、クルマでもバイクでも「小型」だったようです。

といった歴程を鑑みるに、スズキのバイク部門の基幹は、本来的に小型バイクなのではと思うのです。彼らの技術力がどうというわけではなくて、発生過程的にそうなのではないかと。

さて、同社のバイク部門は一九八七年に「アドレス」を、二年後にその廉価版「セピア」を発表します。アドレスというのは、ヘルメットの収納スペースをシートの下に設けた原チャリで、そういうタイプの原チャリは八〇年代半ばになるまでなかったのです。



スズキ・セピア(AF50)
File: Suzuki Sepia.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2009年5月3日)

バイク乗りにとって、たとえばちょっと停車してレストランに入る時などにヘルメットをどうするかというのは、存外に深刻な問題でした。バイクのどこかにくくりつけておいたのでは、ちょっと強い風が吹いたら飛んでいってしまうかもしれません。雨の日にはメットの中までずぶ濡れになってしまい、とてもかぶれなくなります。気候条件がよくても、通りすがりの誰かが何の気なしに盗んだり、どこかに放り投げたりするかもしれない。そういった危険性と常に対してきたバイク乗りにとって、シートの下にメットの収納スペースが設けられたことは、それなりに大きな福音だったのです。

と、こうしてヘルメット収納スペースがある原チャリが珍しくなくなった一九九六年、セピアの後継種がリリースされました。それがレッツです。

もともとがアドレスの廉価版ですから、今でもアドレスより(若干)安い値段で手に入ります。発売当時には、今からは考えにくいかもしれませんが、税込十万円前後で売られていたみたいです。まぁ当時は消費税が三%だったとかはありますが、それにしても現在と比べると隔世の感がありますね。

ただ、廉価版だからといって「安かろう悪かろう」ではないと思います。手袋やペットボトルを入れるインナー・ラックが常設されたり、スズキ・エコ・パフォーマンスというエンジンを使うことで燃費の向上が図られたりしていて、日常使いにしっかり意識的に対応しているように見えます。組み立ては同社の浜松工場(静岡県)で行われているとのこと。


お問い合わせ先

・社名:スズキ株式会社
・住所:432-8611 静岡県浜松市南区高塚町300
・ホームページ:スズキ株式会社







 

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